エログロナンセンス華やかなりし1920年代――
日本で「吸血鬼」という言葉が誕生した時代。
泰西異端への憧憬みなぎる1960年代――吸血鬼が対抗文化のヒーローと化した時代。
吸血鬼に対する日本人の関心が、
ことのほか高まりをみせた二つの時代を貫流する深紅の水脈が、
『吸血』の映像世界には豊かに流入し、新たなうねりを生み出している。
ヴァンパイア・ジャパネスクの正嫡たる艶やかな闇の渦中に、
心ゆくまで耽溺しようではないか!
アンソロジスト/怪談専門誌『幽』編集長 東 雅夫
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ヴァンパイアの血の覚醒と共に、
人間としての自我が脅威にさらされていく様相を、
これほどまでリアリティを保持しつつ表現している作品は初めてだ。
「人間VSヴァンパイア」のような、
安易な二項対立や境界線のある世界観は、
この映画の観賞後、(緞帳の下降と共に)瓦解する。
絶えず不安定で、感情を激しく振幅させ、
予見不可能な挙動をする主人公に、
現代人の病的な側面を垣間見たのは私だけだろうか。
会社員 I.H.
セピア色の静寂の世界で繰り広げられる
日本的な陰影に富む吸血鬼譚。
吸血鬼の血をひく少女の戸惑いとためらいと荒々しい本能と。
さりげない台詞や映像がぞくりとするほどエロティックでした。
イノセントな少女と対照的なおぞましい老吸血鬼を演じた室伏鴻氏の
獣的な怪物ぶりに総毛立ちました、まさに和製ノスフェラトゥです。
もう一度、じっくりと細部まで鑑賞したいです。
作家 金子みづは
吸血鬼伝説についてはわたしはよく知りませんが、
吸血鬼が舶来品と一緒に日本に輸入されたという話を作り、
現代の都市の地下に蠢く生命感を描こうとして、
心理劇ではなく身体劇としてイメージを展開したところに、
この作品の独創性があると思いました。
身体劇として展開するために、人物の台詞を排除して、象徴的であり、
暗示的な字幕の言葉の働きで、作品の物語の世界の非現実性が幻想の
リアリティを実現させているように感じました。
身体のイメージを幻想として実現させることによって、
身体の持つ生命感を甦らせるというところにこの作品意図があると受け止めました。
そう考えて、作品の展開を振り返ると、展開が先を急ぎすぎているように思えました。
若い男女が吸血鬼の棲処に巻き込まれる前に、
自分たちの生命感が欠如した身体の有り様を、
その身体に即した仕方で示された方がよかったのではないかと思いました。
というのは、後半の室伏鴻氏の痙攣する身体が醸し出す生命感の
表出には何とも云えない力を感じさせられたからです。
あの緊迫した筋肉の痙攣は、
現在の四六時中テレビに流されている
美食によって弛緩した身体に対する厳しい批判だと
受け止めました。
身体が持つ風俗に対する批評性ということ、
それが「汝、矯正せよ!隠された石を見いださん」
ということですね。
自分の作品世界を創ろうと努力している姿が感じられる作品に触れて
気持ちよい時間を過ごすことが出来ました。
ありがとう御座いました。
一層表現に邁進されることを希望します。(2009-7-29)
詩人/映像作家 鈴木志郎康
吸血鬼伝説を日本の土壌へ移しており、
前半は静かでスローな展開、
後半はぐいぐいと映像力が増してくる。
特に男性舞踏家の身体表現、その微妙で繊細な動き、
光と影の陰影に富む撮影が魅惑的だ。
それに続く抽象的とも見える映像も美しい。
<実験映像版 ニューヴァンパイア>
の異色作が誕生した。
映画・映像史 岩本憲児
物語的なものを主にはしない、基本はアートなのだけれども、
モティーフとなっている多く60〜70年代の、
西洋由来の怪奇趣味と様式がよい形で用いられていると思う。
作家 高原英理
怖かったです。
闇の中に白く浮かびあがる映像がとっても良かったです。
映像作家 M.K.
“3”という数字がとても引っ掛かる作品でした。
3人の吸血鬼に3度の吸血、映像と音楽の3度の反復。
実は3が魔の数字だったりして。。。
先に述べた3度の反復のようなある種古典的な技法と、
最新の映像も見事に融合したネオクラシック映画だった。
大学生 K.K.
耽美的な映像、すばらしかったです。
私も吸血鬼映画は大好きなのですが、
この作品は映像的にかなりのレベルに達している作品だと思います。
恐怖映画としては「怖さ」が、
いささか物足りないような気もしますが、
これは難しいところですね。
特に吸血鬼ものは、恐怖と耽美のちょうど間に存在するようなところがあり、
そこがまた人をひきつけるのですから。
映画『憑依』 柘山一郎監督
セピア色の画面に踊る赤い色が美しい。全く新しい吸血鬼の物語。
美術評論家 暮沢剛己
“究極”デジタル映像による実験映画の“吸血”。
東西の異種吸血一族が今のこの“吸血”でK-1王者(Kyuketsu-No.1)を競い合う!!
総合格闘映画
映像/ダンス作家 万城目純(まんじょうめじゅん)
全身の神経がキリキリと締め付けられているような
おぞましさを感じる・・・
それなのにどうしてこれ程までに吸血鬼に美しさを覚えてしまうのでしょうか。
生命をかけて性愛と摂取のために体液を求める。
それは、まさしく私たちの根源的な欲望なのだと思いました。
会社員 塚本雄樹
室伏さんの役がバッチリで良かったです。
セリフもあればもっと良かったです。
アートディレクター 亀村佳宏
人の形をした我々は脳ではなく、
血に支配されていることに気付かされるであろう。
映像ディレクター 中根克
吉本直紀の悪夢にまぎれ込んだようです。
血に翻弄され、血に飢え、
血を肉体に入れるしかない室伏鴻の肉体に比べ、
血を越えてゆく少女の精神性、少女性が印象的。
元舞台俳優 糸瓜
すごい!緊迫感!
映像から目が離せないまったく新しいヴァンパイア映画の誕生です。
音が効果的、サイレントの効果も生きてます。
ヴァンパイアの悲哀がドキュンと胸を直撃しました。
フォトグラファー 中根加代估
表現が多様化された今現在において、
ストイックに削ぎ落とされたものの中にこそ
作家の意図が浮かび上がるものである。
それは観る者の五感をフルに刺激し、
身体感覚に鬼気として迫る作品である。
舞踏家/ダンサー 相良ゆみ
吸血という行為は、性交とは違う、
バーチャルが生きるということなのか、
あるいはリアルが死ぬということなのか、
そのどちらでもない世界で、
「愛」という見えないものが
「時間」という永遠の中に横たわっていると感じさせられる秀作。
うねうねとつづく廊下や路地が存在感があった。
言葉を活字媒体で発表するということが即ち
吸血行為かもしれない。
俳人 花森こま
現代の「カリガリ博士」
俳人 五十嵐秀彦
皆さま、暖かいコメント、本当にどうもありがとうございました!